23 訪問看護ステーションって? 病院経営にも直結

 訪問看護ステーションに移動した原由美(はらゆみ)所長が、久しぶりに病棟を訪れました。これから在宅医療へ移行する患者の共同指導のために訪れたようである。在宅医療のことや訪問看護のことが分からない奈須は、原に色々質問してみた。

奈須:原先輩、訪問看護ステーションの運営は、軌道に乗りましたか?

原 :お陰さまで、なんとか軌道に乗ったよ。訪問看護ってすごく面白いよ。奈須もやらない?

奈須:訪問看護に興味があるから色々教えてください。訪問看護を一言で言うとどんな感じですか?

原 :訪問看護って、地域のナースステーションって感じかな。患者の自宅が、病室で、診療所が医局だね。そこへ、私達が訪問をする。病棟看護では、できなかった濃密な看護を提供できるのが、訪問看護ステーションのいいところなのよ。病棟では、患者のベッドサイドに行く時間を増やすことが課題となっているけど、訪問看護は、患者1人に1時間くらい、看護を提供することになるのよ。特に、介護保険対応の患者は、60分が基本サービスなので、患者に1対1の看護を提供できるのよ。看護師として、理想的でしょ。

奈須:でも、老人が多いイメージがあるけど、どうなんですか?

原 :確かに、老人が多いけど、小児の神経難病や若い人のターミナルケアが増えているのよ。

奈須:訪問看護ステーションの営業時間は、どうなっているのですか?

原 :365日24時間よ。地域の患者に安心を提供するとなると、いつでも訪問できる体制でないといけないの。実際に、その方が、利用者も増えるのよ。それと、24時間と言っても、実際の営業時間は、9:00~18:00で、それ以外は、携帯電話で対応して、必要があれば訪問できる体制にしているだけなの。今は、携帯による待機の当番が、週1度程度かな。身体が大変なときもあるけど、すごくやりがいがあるよ。

奈須:最近、師長になって気になることがあるんですけど。訪問看護ステーションの所長の仕事ってどんなことをするんですか?

原 :ステーションの所長の仕事は、看護師や患者、開業医の管理とステーションの採算管理ね。訪問看護ステーションって、働く人が少ないので、一人休むと仕事に問題が出てしまうの。だから、休んだ人の穴を所長が埋めることもあるのね。看護師と患者のサービスのバランスが難しいのよ。開業医も色々いらっしゃるので、気を使うのよね。でも、認められるととことん良い医療を提供するために付き合ってくれるから、チーム医療を肌で感じられるね。いつも、開業医の先生には、感動させられているよ。採算は、難しいね。訪問看護は、点数が低いから、利益がめちゃくちゃ出ると言ったことはないよ。うちのステーションもやっと黒字化したばかりだからね。難しいね。

奈須:病棟で何か協力することがありますか?

原 :先ずは、訪問看護や在宅医療の現状を病棟のナースがわかってくれるといいかな。あまり理解されていないようなので、訪問看護を勧める病院の医師やナースが少ない気がするよ。今後、訪問看護と病棟が人事交流できるといいね。これが要望かな。

 自宅で看護を出前する訪問看護は、病院の平均在院日数を下げることに効果がある。しかし、訪問看護に関する理解が進んでいないため、うまく利用できている病院が少なくない。また、病院の関連訪問看護ステーションが患者をたくさん抱えることは、病院にとって入院患者の確保にもつながる。